個人再生について徹底解説(1)
個人再生とは
個人再生は2001年に創設された新しい制度です。
そこで、まだみなさんにその名前が定着していないのはもちろんですが、弁護士の中でも、まだ申し立てたことがない、という人もたくさんいます。
個人再生の申立ては、そもそも借金額の計算を利息制限法所定の利率で行わなければならず、その計算もやっかいです。
そして、再生計画案を提出する際も、一定の法律の知識が求められます。
したがって、個人再生の相談は弁護士か、あるいは司法書士に依頼するのが良いでしょう。
小規模個人再生と
給与所得者等再生
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生との2種類があり、これらの違いは、利用者を基準とするもの、返済額を基準とするもの、債権者の異議を基準とするものによって異なります。
下の図を参考になさってください。
小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
利用者 | 定期的な収入 | 定期的・安定的な収入 |
返済額 | 低い | 高くなる可能性あり |
債権者の 異議 |
あり | なし(但し、意見聴取はある) |
個人再生の申し立て
個人再生の申し立てにあたって、裁判所に提出する書類は、裁判所によって異なっています。
ですから、もしご自分で申立をしようと思っておられる方は、ご自分が今住んでいる場所を管轄する地方裁判所の個人再生係へ行き書式をもらってくる必要があります。
個人再生の申立に必要な書類は、(1) 書式に記入するもの、(2) 自分で用意する必要があるもの の2種類で構成されています。(※概ね下記に記載した書類が必要となります。)
この点、注意すべきなのは、「絶対に嘘はつかない」こと。本当は持っている自動車を「自動車は持っていない」などと記載しては絶対にいけません。
また、個人再生の場合は、申立にあたって提出すべき書類と、手続き中に提出する書類、そして、再生計画案、と適宜追加する書類もあり、それには提出期限が定められています。
その期限は、必ず守るようにしなければなりません。
個人再生書式記載事項
申立時
- ①申立書(表紙)
申立人の氏名住所連絡先 - ②陳述書
勤務先などの収入状況、家族構成、個人再生を申し立てるに至った事情などを書いていきます。 - ③資産目録
自分が持っている財産について記入します。 - ④家計全体の状況
月々の家計の集計表です。 - ⑤債権者一覧表
誰から、いくら借りているのか。 これに記入する金額は、利息制限法にのっとり再計算をした額です。 - ⑥清算価値チェックシート
持っている財産について価値(価格)を記入します。
中間
- ①異議書
債権者が届け出た金額に申立人が異議を述べる際に理由を書いて提出します。 - ②債権認否一覧表
債権者が届け出た金額を認めるか否かを表にして提出します。 - ③報告書
申立後に財産状況や勤務状況等に変化がなかったかを記入します。
計画案提出時
- ①再生計画
圧縮をした債務をどのように支払っていくかを文章にしたものです。 - ②再生計画表
再生計画を具体的な金額表した表です。
申し立てに必要な書類
- ①住民票(提出前3ヶ月以内に発行)
- ②預貯金通帳のコピー
- ③前年度、前前年度の源泉徴収票(課税証明)
- ④給与明細(3ヶ月分)
- ⑤保険証券(コピー)
- ⑥保険解約返戻金証明書
- ⑦自動車の車検証
- ⑧自動車の買い取り見積もり書
- ⑨不動産登記事項証明書(共同担保目録付き)
- ⑩不動産の査定(2社分)
- ⑪住宅ローン契約書
- ⑫住宅ローン償還表
- ⑬抵当権設定契約書
個人再生の
メリット・デメリット
個人再生のメリット
- 民事再生の申し立てをすると支払いや差し押さえを止めることができる
- 住宅ローンがあっても自宅を手放さなくて済む
- 民事再生後、現在の債務(借金)を大幅に圧縮できる(将来の利息をカットできる)
- 自動車や保険などの所有する財産を手放さなくてもよい
- 自己破産のような資格制限がない(自己破産ができない方でも、民事再生は可能)
- 免責不許可事由がない
(浪費やギャンブルが原因でも手続きが可能)
個人再生のデメリット
- ブラックリストに載ってしまうので、一定期間(5年~7年)借り入れができなくなる
- 手続きが複雑なため、時間がかかる
- 安定した収入がなければ利用できない
- 民事再生の手続きが複雑でまとまった費用がかかる
- 民事再生の手続きが認められなければ、自己破産に移行される場合がある
- 住宅ローンは減額されない
- 信用情報機関に登録される
- 官報に掲載される