任意売却について徹底解説
Part.1
住宅ローンが支払えない!
【1】住宅ローンが支払えない
最近、住宅ローンの支払に困っているお客様のご相談を受けることが増えています。
ここがポイント!
住宅ローンが支払えないというのは、いわば結果ですが、どうして住宅ローンが支払えなくなったのか、という点が非常に重要です。
倒産法(一般的には「債務整理」と呼ばれますので、以下「債務整理」といいます)の観点からすると、住宅ローンが支払えなくなった原因が一時的なものなのか、今後も支払える見込みがないのかという点をよく吟味して、今後の方針を決めていくことになるからです。
住宅ローンが支払えなくなった事情を整理しますと以下のようなことが挙げられます。
- 給料が減った
- ボーナスがカットされた
- 失職した
- 病気になって仕事ができなくなった
- 家族が増えて、生活費が増えた
- 住宅ローン以外の借金が増えてしまった
- 金融円滑化法を利用したが、猶予期間が終了して支払が苦しくなった
- 住宅購入直後から、住宅ローンの支払が厳しい
【2】解決策
住宅というのは、洋服や小物などと異なり、家族が一緒に人生を歩んでいくいわば代名詞です。そんな住宅を簡単に手放したくないという気持ちは本当によく分かります。
そこで、以下のような順番で考えていくことになります。
【3】理由によって異なる解決策
住宅を守れるか(守るべきか)、住宅は手放すべきかを判断するにあたって重視すべきなのは、住宅ローンが支払えなくなった理由が重要であることは前述したとおりです。
そこで、具体的に考えてみましょう。
1.一時的に住宅ローンが支払えない場合
このような場合は、今後住宅が支払える可能性がありますから、何とか住宅を守るように策を講じるべきです。
住宅ローンが支払えなくなった事情を整理しますと以下のようなことが挙げられます。
- 住宅ローン会社(銀行など)と協議して、条件変更をしてもらう
- 個人再生を利用して今後の支払について協議する
ということになります。個人再生についての利用方法は別章をもうけますので、そちらをお読みになってください。
2.今後住宅ローンが支払えない可能性が高い
このような場合は、残念ながら住宅をあきらめなければなりません。
しかし、ものは考えようです。苦しい住宅ローンを今後も継続するより、住宅を思い切って手放して、言っては失礼ですがもっと気持ちの良い賃貸物件を探して幸せになることが良い場合もあります。
- 任意売却
- 競売
そして、その後に残った住宅ローンの残金は、
- 自己破産
- 任意整理
- 個人再生
という方法で処理していくことになります。
Part.2
任意売却と競売との違い
- ①任意売却を理解するのに、競売との比較をするとわかりやすいかも知れません。
- ②任意売却と競売とでは、任意売却のほうが高く処分ができるため、住宅ローンの残高が任意売却のほうが減ることになります
- (1) 支払い不能
- (2) 住宅ローン等の期限の利益喪失
- (3) 担保権者からの競売開始の申立
- (4) 競売開始決定
- (5) 現況調査(執行官の物件調査)
- (6) 配当要求終期の公告
- (7) 期間入札の通知
- (8) 期間入札の開始
- (9) 改札日
- (10) 売却許可決定
- (11) 物件の引渡し
- ③競売にかかる期間は、おおむね半年強といったところです。
- ④競売と任意売却では、単純にかかる時間を比較すると、任意売却の方がおおむね早く解決します。しかし、なかなか買い手が見つからない場合は、担保権者も待ちきれず、任意売却の途中で競売が開始されることもあります。その場合には、競売で売却許可決定がでるまでが、任意売却可能期間と言うことになります。
ここがポイント!
しかし、任意売約と競売との最も重要な違いは、残る住宅ローン等の金額の違いにあります。
ごくごく単純な例を挙げましょう。
市場価格で1,000万円の評価がつく物件について、1,200万円の抵当権がついていたとします。これを任意売却する場合、売却価格の1,000万円から任意売却の経費を差し引いた残額が、担保権者への配当に充当されます。仮に経費が50万円だったとしますと、
任意売却では
(1)200万円 - 950万円 = 250万円(ローン残高)
競売を選択すると(市場の7割程度で競落されるとして)
(2)200万円 - 700万円 = 500万円(ローン残高)
となります。
債務者がこれから残高を返済しようとすれば、できる限りローン残は低く抑えたいと考えるのは当然ですから、競売よりも任意売却を選択した方が適切なのです。
ここに、任意売却をしていく意味があります。
- ⑤ただし、競売は悪いことばかりではありません。
よく考えてみると、住宅ローンが支払えていないために、結果的に競売にかけられているわけですから、いってみれば、タダで住んでいることになります。
そこで、本来ならば支払わなければならない住宅ローン分や家賃分をどんどんと貯めていき、来たるべき引っ越しに備えることになります。
Part.3 任意売却後
~次に住む幸せになれる家を探す~
- ①任意売却を行うと、当然自宅を失うことになるわけですから、次の住居を探さなければなりません。
ここがポイント!
- ②
ここで重要なのは、その後の人生が良い方向に向くような賃貸物件を探すことです。
せっかく住み慣れた自宅を処分するのですから、そして(場合によって)せっかく自己破産をして人生をやり直そうとするわけですから、その後の人生が良い方向に向いていかなければ意味がありません。
- ③そこで、おすすめなのは、任意売却を依頼した業者に、次に住む家も探してもらうことです。この点、そのようなことが面倒だというそぶりを見せる業者には、そもそも任意売却を頼まない方が良いでしょう。弁護士もそうですが、いかにお客様に幸せになってもらえるかということを基準として仕事をしなければ、結果的に良い仕事はできないのですから。
- ④そして、引っ越しのタイミングとしては、できれば任意売却後が良いと思います。これは通常引っ越し代として、担保権者が30万円程度の引っ越し代を出してくれるケースがあるからです。ただし、先に引っ越しができる程度の金額があるのであれば、あえて引っ越し代をめあてにしなくても良いかも知れません。気持ちの良い賃貸物件が見つかれば、引っ越し費用よりもすぐに引っ越す価値があるというものです。
Part.4
任意売却後の残金の処理
~任意売却と破産はいわばセットだ~
- ①任意売却が成功したとしても、多かれ少なかれ住宅ローン等の残金をどうするかの問題があります。
ここがポイント!
- ②
この金額が一切支払えない場合、自己破産の申立を行うことになります。
すなわち、通常は、自宅を守りたいという一心で自己破産を避けるわけですから、逆に自宅を失った場合には、いってみれば自己破産を避ける理由がなくなると考えられるわけです。
実は、債務整理のご相談でお越しになるお客様が一番心配している点はここにあります。「自宅は失うのは仕方ないとしても、残った住宅ローンを支払うことはできません」とおっしゃるわけです。
そんな場合は、「そうなっても困らないために、事後的に自己破産をするのです。そうすれば、今後は一切の支払を免除してもらい、新たな人生が歩めます」と説明しています。
任意売却後は、
多くの場合破産を選択することになる
- ③ただし、どうしても自己破産を避けたい事情があるお客様の場合は、残金を分割払いする任意整理や、全部とは言わないまでもある程度の部分を免除してもらう個人再生という方法をとることもできます。
Part.5 任意売却と個人再生
Part.6 任意売却と任意整理
~自宅は失ったが、債権者や
保証人に迷惑はかけられない~
- ①任意売却によって、自宅を処分した後、住宅ローン等の残金をどうするかについては、先に最も多い処理の例として自己破産があると説明しました。
これは、自宅を処分したとしても、住宅ローンの残金は相当高額になるケースが多く、分割払いとしても現実的に支払えないケースが多いからです。
ここがポイント!
- ②しかし、残金が何とか支払える金額で収まっている場合、または連帯保証人などがついていて、どうしても連帯保証人には迷惑がかけられない場合(もちろん債権者には一切迷惑をかけられないというお気持ちを持っておられる場合も含みます)、何とかして残金を返済しなければなりません。
その場合には、弁護士あるいは司法書士がお客様の代理人として、任意売却後の残金を分割払いする交渉を行っていくことになります。その処理方法を任意整理と呼んでいます。